ゲーム
2026/08/20 23:00

『ダスクブラッド』ディレクター宮崎英高氏インタビュー:美徳のシステムがゲームの幅を大きく広げた。調整で重視したポイントはPvPの比重

『ダスクブラッド』ネットワークテスト版のメディア向け試遊会と合わせて、本作のディレクター宮崎英高氏へのインタビューも参加メディア合同で実施。本作のコンセプト部分や、試遊についたことを宮崎ディレクターに答えていただいた。

本作のきっかけ

──改めて本作をPvPvEというゲームスタイルにした理由を教えてください。

そうですね、まず第一に、本作の最初の情報発信として「PvPvE」というのは、あまり正確ではなかったかもしれません。私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状「PvPvE」というと、もっと特定のフォーマット、例えば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。ネットワークテスト版を触って頂ければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。

ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。何故それを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。つまり「自分たちが面白そうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。

タイミングが『ELDEN RING NIGHTREIGN』と被っているので、そのことについて色々と聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)。我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。

そもそもの話として、本作のはじまりは『ELDEN RING NIGHTREIGN』よりも前ですしね。以前「クリエイターズボイス」でお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持って頂いた、というのがはじまりなのですが、その時は、単に自分が面白そうだと思うことを喋っていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。

ただ、もう少し深堀りすると、私自身が『デモンズソウル』や『ダークソウル』を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。『ダークソウル』の「誓約(※)」が分かりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去色々なアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。

誓約:『ダークソウル』シリーズでのシステム。NPCと誓約を結ぶことで所属できる派閥のようなもの。マルチプレイで誓約先によって異なる目的を達成すると、派閥先で捧げるアイテムを入手できる要素があった。

──フェイズ制など『ナイトレイン』と共通した部分もありますが、共有した要素はあるのでしょうか。

同じ会社内で作られているゲームですし、オンラインゲームという共通点もありますから、技術や知見、フィードバックなどは、しっかりと共有しています。

──今回はNintendo Switch 2での発売ということで、これまでフロム作品をプレイしたことがない新規層を意識した難易度設計だったり、プレイの導線について考えたりしたことはありますでしょうか。

お恥ずかしい話ですが、私自身はあまり考えていません(笑)。元々から、特定のユーザー層を想定し、そこに向けて作る、ということが得意ではないこともあり、「まずは自分が楽しいと思えるもの、作りたいものを作る」ということを大事にしています。

ただ、本作はシステムとルールで遊ぶ比重が大きく、また新しい要素も多いので、それらをしっかりとユーザーさんに伝えることは、過去作よりも重視しています。そして、その点では、任天堂さんの手厚いサポートにとても感謝しています。我々が勝手に「当たり前だ」と思っている事柄についても、そうではないよ、と指摘して下さったり。このあたりは、元々、我々が不得手であることもあり、とても助けられていますね。

──Switch2の機能を活かした要素はあるのでしょうか? 例えばカメラ機能やamiiboとか。

ささやかなものは用意すると思いますが、タイミング的に、この場でお話しすることはできません。
すみません。

PvPのバランス

──シングルプレイゲームとマルチプレイゲームのディレクションで、意識的に変えていることはありますか?

基本的には変わっていませんが、システムとルールで遊ぶ比重の大きいゲームなので、プレイテストと、それを受けての調整を、過去作よりも重視しているかと思います。勿論、過去作でもプレイテスト自体は行っていますが、それを受けて全体ルールなどを調整することが多いというか。私としては新鮮で、本作を作っていて楽しい部分ですね。

──今作の独特のゲーム性の中で、特に調整に苦労した点があったら教えてください。

調整で重視したポイントは幾つかあるのですが、そのひとつは「PvPの比重」ですね。ここで言うPvPは、プレイヤーキャラクター同士の直接的な殴りあいを指すのですが、その勝利に対する重要度、あるいはプレイ時間に占める割合、といったものです。この点については、ネットワークテストでも引き続き重視しており、頂いたフィードバックを踏まえて、製品版に向けた調整を行うつもりです。

「儀式場」という場所以外では他プレイヤーを倒して特にメリットはないように設計されており、様々な行動で美徳を得る手段がある。対人戦を行わずとも最終フェイズへ向かうこともできなくはない。

戦いの舞台の共通点は「人類の滅び、衰退、落日の時」

──全キャラクターで近距離攻撃と遠距離攻撃の両方を採用した経緯について教えてください。

基本的には、まずアクションの土台があり、それに合わせて武器種なども調整されています。本作では、プレイヤーキャラクターは「血族」であり、超人的な能力を持ち、かなり高くジャンプでき、空中を駆けるような動きも可能です。一言で言うと、今作のアクションはダイナミックなもので、そのベースで戦うためには近接武器だけでなく、標準で遠距離武器も必要だろうと考えました。

キャラクターによって武器は固定。遠距離攻撃の性能差はキャラクターによって大きな違いがある。

──世界観が近代的なゴシック調という、『ブラッドボーン』を彷彿とさせる部分もありました。この世界観にした経緯を教えてください。

今作のプレイヤーキャラクターである血族のモチーフは、いわゆる吸血鬼です。なので“吸血鬼もの”として最もストレートな世界観として、最初のマップとしては「ゴシック・ヴィクトリアン」を選択しています。

ただ、今作の世界観はそれだけではありません。ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版では他にもマップが2つ用意され、それぞれ「ゴシック・ヴィクトリアン」とは、また違った世界観を持っています。

本作では、血族たちは色々な時代や場所の「黄昏」に呼ばれ、血授をめぐり戦います。戦いの舞台の共通点は、それが「黄昏」、つまり「人類の滅び、衰退、落日の時」であることです。そういった意味で、結構広がりのある世界観かと思います。

潜水スーツに身を包んだ、血族の中でも異質な見た目のゾーク。海底ケーブルを振り回し、スピアガン、ミサイル、人間ロケットと近代兵器を扱う。まるで吸血鬼には見えないが、ちゃんと吸血もできる(マスクから吸えるようになっているっぽい)。

──ゲームの中で車輪のモチーフが印象的でした。あれはどういったものなのでしょうか。

車輪は、黄昏の戦いにおける召喚が「時空を超えている」ことを表現するためのモチーフですね。先ほどもお話しした通り、本作の戦いの舞台は、色々な時代、場所の「黄昏」なので。

──製品版ではマップが他に2つあるとのことですが、広さは今回のネットワークテスト版と同じくらいなのでしょうか

基本的には同じですね。ゲームバランスを考えると、適切なマップの大きさというのは大体決まっており、どのマップのその範囲内に収まるように調整されています。

──マップデザインのコンセプトはどのようなものでしょうか。

本作のプレイヤーキャラクターは機動力が高く、特にジャンプや空中制御に優れていますので、それに合わせて、飛び回るのが楽しい立体マップを意識してデザインしています。元々、私自身縦に積むマップが好きなので、それは楽しい作業でした。また、本作のマップでは、過去作ほど強い導線を引いていません。これは、本作のゲーム性を、繰り返しプレイと自由な立ち回りを意識した結果ですね。

今作は多段ジャンプよる縦の方向への移動量と、素早い空中起動がアクション面での大きな特徴。ロアンローの街では時計塔や宮殿など、高さのある建物から地下下水道や洞窟まで高低差のあるフィールド設計になっている

本作でも少年は登場します

──今作のキャラクターも顔が隠れているとか普通の人間に見えない風貌などフロムらしさがありますが、ビジュアルは世界観に合わせてのものでしょうか、それとも宮崎さん自身の好みが反映されているのでしょうか。

まあ、私自身の好みであることは特に否定しません(笑)。ただ本作は、我々としては比較的、顔が見えるキャラクターが多いと思いますし、キャラクターをデザインし、モデルを制作する過程で、キャラクターの背景や人格などを丁寧に表現しようとしています。

過去作で言えば『SEKIRO』とか『Déraciné』とかに近いでしょうか。なのですが、まあ隠したくはなってしまいます。おそらく、単に好きなんだと思います、隠されたものが(笑)。『ELDEN RING』などでもそうだったのですが、顔データをしっかり作っているのにフルフェイスみたいな。

──つまり宮崎さんは目元を隠した女性や、凛とした少年のキャラクターがお好きなのですか?

そうですね。お好きなんだと思います(笑)。ミステリアスな存在や、自分とは縁遠い、憧れるような存在が。でも、それが何故かは、あまり掘り下げないようにしています。あんまりよろしくないものが出てきたら、辛いですからね(笑)。まあ、これはもう受け容れるしかないのかなと。なので、本作でも仰るような少年は登場します。大変申し訳ございません。

現在判明している6人の血族のうち、顔がはっきり見えてるキャラクターは狙撃手レイラと元老サミールの2人。狙撃手レイラはゾンビっぽい外見であるが。アルバートは被り物はしていないものの、前目元が完全に隠れている。

勝つことだけではないゲームの楽しみ方

──試遊前の説明で「結果が上位でなくても楽しめる」とお話がありましたが、どういった目的意識で開発されているのでしょうか。

そうですね。大きく3つの点があると思います。1つ目は「美徳」のシステムです。

美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。

2つ目は、ロールプレイ的な楽しみです。本作は、純粋に勝ちを目指すのも、勿論楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。イベントや「烙印」、特に後者にその色が濃いでしょうか。

せずして割り当てられる「受動烙印」には、時にドラマがあるもの思いますし、たまたま、特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。

3つ目は、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。本作の拠点である「夜の館」には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。

また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行われます。

烙印はキャラクターに1つ設定でき、バトル中に「宿敵を見つける」「旧友と共闘を組んで最終フェーズを迎える」「花嫁に求婚する」といった条件を満たすことで恩恵が受けられる要素。対象相手は基本的にランダム。ネットワークテスト版ではキャラクターごとに烙印は固定だが、製品版では自由に変更できるとのこと。

──美徳に関して、その勝利点を稼ぐという部分はボードゲームっぽさも感じました。そこは宮崎さんがボードゲーム好きというのもあるのでしょうか?

そうですね。美徳のシステムは、ボードゲームを参考にしている部分があると思います。本作には、美徳を得る手段の一つとして「称賛」という要素もあるのですが、開発中には「ロンゲスト・ロード(※)」と呼ばれていましたからね(笑)。

個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。

ロンゲスト・ロード:ボードゲーム『カタン』の用語。自分の街道を最初に5本以上連続させたプレイヤーが「最長交易路(ロンゲスト・ロード)」のカードを受け取れるというもの。『ダスクブラッド』では各フェーズで「敵を倒した数(血の牙)」と「新しいアイテムを習得した数(蒐集家)」が多いプレイヤーの1位と2位に美徳が増える「称賛」のシステムがある。

──フロムファンの方々から「『ダスクブラッド』は気になるけど、対人ゲームが苦手だからどうしよう…」と悩ましく思っている意見も見かけました。そういう方もプレイしやすいという設計でしょうか。

そうですね。先ほどお話した通り、純粋なアクションスキルによるPvP以外の幅もあり、また楽しみ方もある、といった設計になっています。私自身、純粋なアクションスキルは決して高くないプレイヤーなのですが、そんな私でも楽しめるようなゲームだと思います(笑)。

ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみ方もできるのかなと。

──戦闘をせずとも上を目指せるということですが、結局最終フェーズは決闘(3人よる戦闘での決着)になりますよね。

はい。最終戦のないパターンも試したのですが、どうしても締りが悪く、現状の形に落ち着きました。ただ、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。

キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。また我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じて欲しいです。率直に申し上げれば、そのための演出面ではネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。

ネットワークテスト版だと最後の3人に残ったプレイヤーが表示されるものの、最終フェイズへの移行はスッ…と入っていくので、あくまで「次が本番」という印象が強いかもしれない。

ストーリー進行を楽しみながら勝てるようになっていく

──ストーリー進行というのは、ソロプレイが可能なのでしょうか。

いえ、そうではありません。ストーリー進行は、あくまでもオンラインプレイを前提にしています。本作の断片的ストーリーテリングは、オンラインプレイ、特にそのドラマ性を意識して設計されており、それを楽しんで欲しいと考えています。

勿論、ストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。

──キャラクタービルドに関してはどのようなものが用意されているのでしょうか。

血族キャラのカスタマイズ要素は用意します。キャラクターベースは、おそらく10体を大きく超える数を用意できると思います。

各キャラクターで武器は固有ですが、血族技や、「権能」と呼ばれる特殊能力などをカスタマイズできます。また、仮面や入れ墨など、見た目に特徴をつけることも可能ですし、「烙印」と呼ばれるロール要素や、特定のイベントの発生確率を上げる、といったカスタマイズも可能です。

本作のキャラクターカスタマイズは、能力や見た目だけでなく、そのキャラクターの運命、宿命といったものまで対象とするイメージなんです。そして、それらのカスタマイズ要素が、あるいはその収集が、断片的ストーリーテリングも担っている訳です。

──オンライン対戦にランキングシステムはあるのでしょうか。

はい。運営方法など検討中ではありますが、ランクマッチやランキング、シーズン制などは用意します。戦いに勝利し、ランクを上げる。当然ですが、そうしたことも、本作の楽しみのひとつと考えています。

──こういったマルチプレイのゲームだと最初は多くのユーザーが試行錯誤しながら楽しみますが、最適化が進んでいくと煮詰まったプレイヤーのみ残って、ライトユーザーが温度感の違いもあっていなくなっていく傾向にあります。そういったことは意識されて設計されていますでしょうか。

これには、2つの答えがあると思います。1つ目は、これまでお話ししてきたように、本作には様々な楽しみ方があること。そのため、初心者が楽しみながら、熟練者になっていくことが可能なこと。例えば、これも繰り返しになってしまうのですが、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れですね。

2つ目は、これはアップデートでの話になりますが、熟練者が、むしろ初心者のメリットになるような要素を考えています。例えば、熟練者が特別な血盟相手になってくれたり、特別な強敵になってくれたり、あるいは、レアなイベント(※)をもたらしてくれたり、といったような。熟練者が感謝され、尊敬されるようになれば、と思っています。

ただ、これはまだ構想の段階です。現状は、まず製品版の完成に全力を注いでおり、アップデートの内容、タイミングなどは、まだ未定の部分も多くなっていますので。

※イベント:ゲーム中に突発的に発生する特殊なイベント。いくつかの種類があり、発生時は各フェーズの開始時にイベントカードが提示される。イベント内容を達成することで美徳を大きく稼げるといったメリットがある。

──製品版が出てからの話になりますが、ゲーム全体のバランス調整はどれくらのペースを予定されていますでしょうか。例えば細かく実施していくのか、シーズンリセットごとに実施していくかとか。

こまめにやっていくつもりです。調整であれ拡張であれ、余地の大きいゲームデザインかと思いますし、実際にどういう風にユーザーさんに遊んでもらえ、楽しんでもらえるのか、未知の部分も大きいので。そういう意味では、今回のネットワークテスト版の結果も重視しています。テストのフィードバックを受けて、できるだけ調整したいと考えています。

おわり

ダスクブラッド
発売日:2026年予定
対応機種:Nintendo Switch 2
ジャンル:マルチプレイアクション
プレイ人数:最大8人
©2026 FromSoftware, Inc.

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