ウチダ
今日はよろしくお願いします! 長峯監督には、12月14日公開の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』のことはもちろん、アニメ監督というお仕事やご自身についても聞いてきたいと思います! まず、子供の頃の夢からお聞きしてもいいですか?
長峯
僕は変に現実的で、面白みがあんまりない子供だったんですよ。だから、将来の夢というのもあまり考えなかった。小学校1年生の頃、昼休みの放送で「将来の夢は?」という質問に答える時間があったんですけど…なんて言ったと思います? サラリーマンでしたからね。
葛西
それは堅実…!
長峯
クラスメイトがケーキ屋さんや野球選手と言っている中、「そんな夢、叶うわけないだろ。サラリーマンぐらいしかなれないだろ」と思っていました(笑)。ウチは親が2人とも公務員だったので、電車の運転手や小学校の先生など、どちらかというとお堅いイメージのある職業を自分でも考えていて。皆のためになることが良いかなと思い、警察官になろうと考えたり。それで警察官になるなら柔道が必須かと思い、高校に入学して、柔道部に入部しました。ところが、部活前に遊んでいたら、なんと骨折しちゃってそのまま挫折。部には戻らず、いくじなしのまま2年生になったら、友だちが「特撮同好会に入らないか」って言ったんです。
ウチダ
そこが転機になったんですね。
長峯
戦隊モノなどの映像を見て評論するだけの同好会だったんですけど、誰かが「自分達も8ミリで作品を撮ろう」と言い出しまして。僕は当時、特撮モノを全然観ていなかったんです。ガンダムなんかは別として、特撮やアニメって子どもが観るものだろうと思っていたから全く観ていなかった。友だちに誘われたから特撮同好会に入ろう、という軽い気持ちだったんですけど、そこで特撮映画を撮っているうちに「皆のために生きるって楽しいのかなあ」と思い始めてしまい(笑)。当時は自分が作品に出演して、アクションもしていたので「役者もいいかなぁ」なんて思っていました。
葛西
それで、大学は映像系のところに進むんですか?
長峯
最初はやっぱり、教師になるための学科がある大学をはじめ、色んなところを受験したんですが成績が悪くて全部落ちちゃって。とくに社会の成績が絶望的だったんですが、友だちから『日本大学芸術学部映画学科(※1)を受ける。ここは社会の試験がないぞ』と言いれて。
ウチダ
お! チャンス!
長峯
そこで1年浪人して、社会以外の課目をちゃんと勉強して受けたら…合格したんですよ。でも、映画学科の撮影・録音コースに入りました。カメラマンや音響さんの養成科で、演出家志望のコースじゃなかったんです。なぜかといえば「監督なんてそんな、大層なモノになれるわけないじゃん」と思ってたから(笑)。
ウチダ
とは言いながら、現在バッチリ監督をされているワケですけど(笑)。
長峯
周りはみんな実写映画志望で芸術的な作品に参加したい人が多かったんですよ。マンガを読んでいるだけでバカにされたり。少女マンガを読んでいただけで、アダ名が『オパーリン』(※2)ですよ! それで「このままCMのカメラマンにでもなるのかなぁ…」と思っていたんですが、安月給で10年くらい修行しないといけないし、立ち仕事もイヤだなぁなんて(笑)。そしたら卒業ギリギリに東映動画(当時)の研修生募集を発見しまして。給料も高いし、座り仕事だし最高じゃないかと思いました。最初の試験では「理想の演出とは?」という論文を書き、その後にコンテ試験がありました。論文ではワケのわからないアツいことを書くし、続くコンテ試験ではあろうことか名前を書き忘れて帰っちゃったんですよ…。
葛西
あーああ…
ウチダ
でも、今ここにいるということは…!?
長峯
すっかりあきらめていたんですが、奇跡的に合格だったんですよ。論文が意外にも高得点、名前を書き忘れたコンテ試験も「名前書いてないのキミだけだから。書いといてあげたよ」って後で言われまして。
ウチダ
やさしい…!
長峯
実は会社に入るまで東映動画がどんな作品を作っているかもほとんど知らなかったんですよ。それで改めて調べ直したりして。入社してからは演出助手を6年くらいやり、ようやく演出に昇格することができて、その3年後くらいにTVアニメのシリーズディレクターになれました。そこでは出会いに恵まれましたね。僕が助手としてつかせてもらったのが、当時、劇場版『ドラゴンボールZ』の監督などをされていた山内重保さんで、山内さんにくっつきながら、何も考えないで仕事をしているうちに色々なことを教えてもらいました。その流れの中で馬越嘉彦さん(※3)というスーパーアニメーターに出会い、これまた色々なことを教わりました。とにかく周りがすごい人ばかり、天才揃いだったので「これは、がんばらないと対等に付き合ってもらえない」という感じで必死に食らいついて、ここまで来ましたね。友だちや師匠には恵まれていたんじゃないかと思います。そういえば、同じ中学校には今石くんもいたんですよ。『グレンラガン』(※4)とか『キルラキル』(※5)の監督だった今石(洋之)くん。友だちの友だち…くらいの距離感でしたけど、いつもまわりに天才がいて心がザワザワしている感じでした。
葛西
ここからは、いよいよ来月に公開が迫った『ドラゴンボール超 ブロリー』について伺っていきたいと思います。
ウチダ
長峯さんは、現場でどんな仕事をされているんですか?
長峯
全体の演出プランや脚本も見ますけれど、それだけじゃなくて、どれだけ凄いアニメーターを連れてきて仕事を頼めるかとか、いわゆるマネジメントの部分も大きいですね。山内さんもやられていたことで、そういう場面を見て勉強してきたことが生きています。でも今回はスゴいですよ。最初の打ち合わせのとき、みんなに「自分のイマジネーションを爆発させて、好き勝手にやってください」というような話をしたんだけど、ホントにみんなその通りにしてきて(笑)。僕が原画チェックしても、何だかわからないくらいスゴいのを上げてくるんです。監督で演出ディレクターでもあるのに、僕ディレクションしてないんですよ(笑)。「とにかくスゴいのはわかるから絵になってから改めて考えようか?」みたいな。
葛西
これはすごいアクションシーンになりそうですね。今回は鳥山先生がシナリオを作られましたが、それをどのように作品に落とし込んだのでしょうか?
長峯
やっぱり鳥山先生は最高にマンガが上手いから、どんなストーリーだって面白くしちゃうじゃないですか結局。だから「鳥山先生が書いた物語なら絶対面白くなるはず!」と信じきる。ただ、そのまま作ると予定していた上映時間の倍になることがわかったので、大事な要素はなるべく変えないようにしながら、何とか時間内に収まるよう頑張って。僕は劇場版の現場に来る前、TVアニメ『ドラゴンボール超』の現場にいたんですが、そのときも同じでしたね。基本的には鳥山先生のセリフ通りに全部作っていき、余分な展開やセリフなどの、自分の解釈は入れない。
ウチダ
今回の見どころは?
長峯
今回は悟空が自分のルーツを認める、さらには誇りを失った戦闘民族・サイヤ人が再生する物語だという点ですね。歴史上ではベジータや悟空、ブロリー・バーダック以外は、本来の戦闘民族として誇りが失われている状態で生まれてきたんじゃないかとも思いました。バーダックは戦闘民族だからというわけではなく、生来の性質として誇り高さが備わっている。ブロリーや悟空・ベジータは、子供のうちに惑星ベジータから出ていたから、サイヤ人としての純粋な部分というものを残したまま生きている。つまり、純粋なサイヤ人の生き残りはベジータとブロリー、そして悟空。ベジータは王子としての誇りとかそういったものも含まれてくるのでまた少し異なるんですが、その3人以外は、戦闘民族としての誇りが失われているのではと。その中でも、これまであまり自らをサイヤ人として意識してこなかった悟空が、本当に純粋なサイヤ人・ブロリーとの出会いを通してその誇りを改めて感じる物語なんじゃないかと思うんです。
ウチダ
それはアツいですね…! 演出的な見どころは?
長峯
自分の中では超サイヤ人ゴッドと超サイヤ人ブルーの違いを出したいと思い、戦い方を結構変えたんですよね。ゴッドの方は見切りや躱しを駆使してテクニカルな感じで、ブルーになったらパワー押しの戦い方とか。通常の超サイヤ人は総合能力が上がるので、戦い方の質をあまり変えたりはしなかったんですけど、ゴッドは神っぽい技を使ったりとか、ブルーは超パワー押すようなイメージに近づけました。それと、僕は『ドラゴンボールZ』の現場を経験して、そのニオイとか魂を受け継いでいる最後の世代です。なので、超サイヤ人に変身するときも、ちゃんと身体に「ウウウウゥッ……」って力を入れてから、力を解放して変身させる、という雰囲気を必ず出さないと駄目だろうなと思うんですよね。そういう伝統の部分と、現代のスタッフが過去を超えようと描いてくるスゴい絵を融合させて、新しい歴史を生み出したいと思います。
葛西
とてもスゴい作品になりそうで、完成が今から楽しみです。早く見たいですねー!
ウチダ
エンタメ業界をめざす読者の方へのアドバイスもお願いします。
長峯
自分の経験ですけど、現場に面白い人がいっぱい集まってくると、だんだんお祭りみたいになってきて、どんどん楽しくなってくるんですよ。そしていい作品が生まれるんです。いい現場があるから面白いやつが集まってくるのか、面白いやつが揃ったからいい現場になるのか。どちらが先かは何とも言えないんですが、今の現場も『ドラゴンボールが描きたくてしょうがない!』みたいな人がいっぱい集まっているんです。高校時代の特撮同好会じゃないけど、結局のところ…そういう場にいたい、お祭りがしたいっていうのが僕の仕事の原動力なんじゃないかと思います。みんなでワチャワチャやれる場を見つける、仲間と出会うみたいなことが大事だし、そういうモノに出会える幸せを大切にするといいんじゃないですかね。
ウチダ
なるほど! 映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の制作も追い込みだと思いますが、がんばってください!
葛西
今日はありがとうございました!

  • ※1…マスコミや映画・映像業界に多数の人材を輩出している、名門学部。
  • ※2…河内実加先生による少女マンガのタイトル。
  • ※3…『おジャ魔女ドレミ』などの作品で知られる、著名なアニメーター。
  • ※4…正式タイトルは『天元突破グレンラガン』。2007年4月より放送されたTVアニメで、激アツなキャラクターと巨大ロボットが活躍する壮大なストーリーが人気を集めた。
  • ※5…正式タイトルは『キルラキル KILL la KILL』。2013年10月より放送されたTVアニメ。父の死の謎を探るため、流浪の女子高生・纏流子が活躍する学園アクション。