葛西
今日はよろしくお願いします!
ウチダ
まずは、この仕事を始めるきっかけから伺いたいと思います。子供の頃は、どんな仕事につきたかったんですか?
松田
ハッキリと、これになりたいというものがなく漠然と考えてました。家が商売をしていて、親が休日も働いている姿を見て育ってきたんです。だから、子供心に、会社に勤めるということがどういうことなのかも分からなかったのですが、単純に休みはあった方がいいなという理由で、自営業とサラリーマン、どっちにする?と聞かれたら「うーん、サラリーマンのほうがいいかなー」というくらいで。大きくなったら、どこかの会社に勤めて働くんだろうなーということをボンヤリ思っていましたね。
葛西
なにか子供時代の思い出があれば教えてください。
松田
少年ジャンプが大好きで、毎週本屋に並ぶのが楽しみでした! 『アストロ球団』(※1)とか、夢中になって読みましたね。その影響で、野球選手に憧れたりもしましたが、でも実際にはやっていないという(笑)。
ウチダ
うわ、ありがとうございます! 子供時代にはゲームおやりになっていたんですか?
松田
私が中学生ぐらいの頃に『スペースインベーダー』が流行して、その時から、ゲームセンターが大いに盛り上がったんです。人並みには好きで、よく遊んでたんですけど、本格的に遊ぶようになったのは、いまの仕事についてからですね。
葛西
ゲーム業界に入るきっかけは、何だったのでしょうか?
松田
これはホントに偶然ですね。でも、エンタテインメントの世界にはずっと興味があって。私は経理や財務といった、お金という視点から会社を見る仕事をしてきているのですが、作品を作るために必要なお金の集め方に当時から興味津々で。ハリウッド映画の製作資金を集める場合なども、革新的なアイディアがいっぱいあって、そういう新しいしくみを作ってみたい、チャレンジしてみたいという気持ちがありました。
ウチダ
そして、1998年に当時のスクウェアに入社されるわけですが、当時の印象はいかがでしたか?
松田
普通のサラリーマンが集まる会社とは、まるで違う。おもしろい会社だなーと思いました。
葛西
これまでで、一番の大仕事といえば何ですか?
松田
やはり、エニックスとスクウェアの合併(※2)ですね。このときは裏方として、大きなことから細かいことまで、実にいろんなことを相談しながらまとめていきました。ゲーム業界でも大きな会社同士が1つになるわけですから、すごく注目度も高いし、ニュースにもなる。小さなほころびもなく、無事に終えることができるように、すごく気を使いました。
ウチダ
例えば、どんなことですか?
松田
新しい会社の社名や、ロゴをどうするかとか。ロゴは最終的に、10種類近い候補の中からみんなで選びましたね。あとは会社の引越し。合併前のスクウェアは目黒、エニックスは初台にあったのですが、やはりひとつの場所にまとまらないと合併した感じにならないんですよ。各部署をどこに配置するかにはじまり、サウンドチームのスタジオをどうやってオフィス内に作ればいいのか、壁の防音はどうするのかということにまで関わりました。
葛西
ホントに、大きなことから小さなことまで、あらゆることに携わってこられたんですね。
松田
ゲーム作りに関わるクリエイターが会社のオモテ側の顔。いわゆるオモテ面だとしたら、私はウラ面。クリエイターを脇から支える裏方なんです。
ウチダ
松田さんをはじめとする、裏方の皆さんの支えがあってこそ、制作スタッフの皆さんは心おきなくゲーム作りに打ち込むことができるんですねー。
葛西
その後、合併を経てスクウェア・エニックスの社長に就任。現在はスクウェア・エニックス・ホールディングスの社長も務められ、グループ会社を含めて統括する立場にあるわけですが、社長の醍醐味や、社長になってから気づいたことがあれば教えてください。
松田
やはりいろんなことを広い視点で見ることができるようになるというか、この立場でしか見えないものがあるんじゃないかと思います。会社の中だけではなく、お世話になっている関係各社の方、そしてソフトを買ってくれるお客様の声に耳を傾け、それを良い方向へとまとめあげていくことができたときは、うれしいですね。
ウチダ
社長として普段から注意していることや、心掛けていることってありますか?
松田
やはり会社を代表する立場なので、発言は慎重にしなくてはと思っています。これまで、そういうことをあまり気にせずにきてしまったので(笑)。おかげで、広報にはいつも怒られてばかりですよ。
葛西
さて、ここからはスクウェア・エニックスの代表作ともいえる『ドラゴンクエスト』(以下DQ)、『ファイナルファンタジー』(以下FF)についてもお聞きしたいと思います。
ウチダ
先日、E3で『FFVII』(※3)のリメイクが発表された瞬間を見たんですが、会場はスゴい盛り上がりでしたね!
松田
発表が終わったあと、バックステージで知らない人から握手を求められたくらいでしたからね(笑)。私自身もビックリするほどの反響があって、本当にうれしいです。やはりタイトルの発表は、ついに幕が開いた! という緊張感があります。
葛西
松田さんが考える『FF』のスゴさとは何でしょうか?
松田
『FF』って、全部が新作なんです。クリスタルなどのキーワードは継承されているけど、キャラクターもストーリーも世界観も、作品のたびに全然違う。システムも、どんどん変わっていく。「同じことをやっちゃダメだ!」という考えのもと、前作をいかに超えていくかにチャレンジし続けているんです。それぞれが全く別の作品なのに、シリーズとなっている非常に稀有な作品だと思います。
ウチダ
ナンバリングタイトル最新作である『FFXV』(※4)も現在制作中ですよね! 開発はどのくらいまで進んでいるんですか?
松田
そんなに遠くない将来には、皆さんにお届けできると思います(笑)。
ウチダ
それじゃ『FFVII』の発売は、いつ頃になりますか!
松田
こちらもちゃんと作っていますので。今後の情報を楽しみにしていただければと思います。
葛西
発言が慎重になりましたね(笑)。それでは話を変えて、今度は松田さんが考える『DQ』のスゴさについて教えてください。
松田
やはり日本におけるRPGゲームのさきがけであり、マスターピースだと思います。堀井雄二さんが手がけるストーリー、鳥山明先生が描くキャラクター、すぎやまこういち先生が作る音楽。それぞれパーフェクトなんですが、さらにそれらが一つに組み合わさったときの三位一体感、数倍にふくれ上がっていく感じは『DQ』ならではのものじゃないかと思います。来年のシリーズ30周年に向け、最新作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(※5)も発表したばかりなので、ここからグッと盛り上げていきたいですね。
ウチダ
うおー! 楽しみです! そのほかにも、現在制作中のタイトルでおすすめというか、個人的な注目作があれば教えてもらえませんか?
松田
そういう意味では、全部になっちゃうんですけどね。『DQ』『FF』でも、それ以外の作品でも、作っている側は一球入魂。いつもその想いを、ひしひしと感じるんです。なので、一度作りはじめたタイトルは、よほどのことがないかぎり世に出して問う。ちゃんとリリースしてお客さんの審判をあおぐ、ということを心掛けています。
葛西
松田さんの好きな言葉、座右の銘があれば教えてください。
松田
「不易流行」ですね。時代を越えても変わらない大事なことを突き詰めながらも、それを日々アップデートさせていかなくてはならないという意味の言葉です。
ウチダ
すごいスピードで進化していくゲーム業界の中では、とても大事な言葉ですね。
松田
はい。技術の進化を含め、ゲーム業界は変化が激しいので、芯の部分は見失わず変化に対応していきたいです。
葛西
ゲーム業界を目指す読者に、アドバイスがあればお願いします!
松田
ゲーム業界にも、いろいろな仕事があります。最前線で開発に携わる作り手。作品を宣伝したり売ったりするマーケティング・営業。さらにはお金の計算や働きやすい環境作りを提供する経理や総務といった、ぼくらのような裏方。こういう人たちが一丸となることで、皆さんのもとに作品を届けることができるんですね。これを全部一人でやるのは到底ムリな話。それぞれが自分の得意分野で活躍することで、成功に近づくことができるのだと思います。これからゲーム業界を目指す人には、自分がどんな分野で活躍したいのか、どんな仕事が向いているのかを考えてみてほしいですね。そうすれば、道は開けてくると思います。
ウチダ
ありがとうございます! それでは最後に、Vジャンプ読者へメッセージをお願いします!
松田
これからもスクウェア・エニックスでは、いろいろなタイプのゲームをリリースしていきたいと思っています。ビックリ箱のような、オドロキのあるゲームをいっぱい世に送り出していきたいと思うので、楽しみにしていてください!

※1…1972年から1976年まで、週刊少年ジャンプに連載された野球マンガ。運命に導かれて集結したプレイヤーが、打倒大リーグを掲げて幾多のライバルと死闘を繰り広げる。
   奇想天外なプレーの数々と、時には死者までをも出す壮絶な戦いが読者のハートをわしづかみにした。
※2…2003年4月に合併。『DQ』と『FF』が同じ会社からリリースされるというインパクトも手伝い、たいへんな話題となった。
※3…1997年にプレイステーションで発売されたRPG。圧倒的なビジュアルの進化で新時代の訪れを告げた、ゲーム史に残る名作。
   今年のE3にて、プレイステーション4でのリメイクが発表された。
※4…PS4、Xbox Oneでのリリースが決定。一夜にして故郷を失った王国ルシスの王子、ノクティスと仲間たちの冒険を描く超大作。
※5…PS4、ニンテンドー3DSでのリリースが決定。最新情報は今後の週刊少年ジャンプ&Vジャンプでどんどん発表していくぞ!