葛西
きょうは、よろしくお願いします!
ウチダ
歴代編集長が全員集まるなんてスゲー! この機会でないと聞けない話をいっぱい聞いていきたいと思います。まず、Vジャンプってどうやって生まれたんですか?
鳥嶋
発端は、当時の上司に「コロコロみたいな本を考えてほしい」と言われたことかな。ぼくはそれまで週刊少年ジャンプの編集者として仕事をしていたんだけど、『ファミコン神拳』(※1)というゲームページを作っていて、それが人気だったの。
近藤
確か、1回目にやった『ゼビウス』(※2)の無敵コマンド紹介で、いきなり3位になったんですよね。
鳥嶋
そういう経験をもとに、いくつか増刊を作ってみたんだけど…コロコロみたいなものを作るのは、ムリだという結論に達したんだよね。我々には長い時間をかけて培ったノウハウがないから、同じものは作れないんです。そこでどうしようかと考えたとき、ジャンプの強みを生かすことにしたんだよね。
葛西
どういうことですか?
鳥嶋
これまで少年ジャンプで取り扱ってきた『DQ』と『FF』を柱にして、マンガ作りのノウハウを生かしたゲームキャラクターマガジンを作ることにしたんです。一言で言うと『子どものためのゲーム雑誌』を作ることにしたわけ。
ウチダ
その頃は、子供向けのゲーム雑誌ってなかったんですか?
鳥嶋
ゲームって子どものためのメディアなんだけど、それを子供向けにちゃんと紹介する雑誌は当時なかったんです。さらに言うと、ぼくはその頃ゲームやマンガ、アニメとか子供向けのエンタテンメントが一つのモニターで見られる時代が来ると思っていたの。そういうデジタル時代にむけての準備を、この雑誌でやろうという気持ちでVジャンプを創刊したんです。
葛西
なるほどー。ちなみにVジャンプの『V』って、どんな意味があるんですか?
鳥嶋
もとは増刊を作っていたときにスタッフが「VサインのVはおぼえやすいし、ロゴにしやすいから」という理由でつけられたんだけど。ただ、改めて創刊するときにぼくは『V』に『ヴァーチャル』という意味を付け加えたんです。ゲームとマンガとアニメを中心に、ヴァーチャルなものを取り扱う新たなジャンプとして世に送り出したのが…20年前か。
ウチダ
その頃、ここまで続くと思ってたんですか?
鳥嶋
始めた頃は、せいぜい3年かなと思っていたんだけどね。
吉倉
20年は長いよね。正直、こんなに続くとは思ってなかった。
葛西
そうしてVジャンプがスタートしたわけですが、創刊当時に苦労したことなどがあれば教えてください。
鳥嶋
これは苦労話ではないんだけど…Vジャンプが始まってすぐ、北海道から九州まで全国各地にあったソフトハウスを一つずつ訪ねていったんですよ。
ウチダ
あいさつ回りですか?
鳥嶋
それもあるんだけど、一番の目的は新たなスターの発掘。少年ジャンプでマンガ家たちが子どもの憧れであったように、これからはゲームクリエイターがスターになる時代が来るという確信があって。これまで裏方だった作り手たちをオモテに引き出し、あわせてゲームが完成するまでの過程をVジャンプ誌上で見せていこうとしていたんです。そうすることでゲームの世界も広がるし、読者はよりゲームに興味を持つと考えたわけ。そこで、全国を回って「最新の作品が作られている現場を見せてください」「若いクリエイターを紹介してください」と言って回ったんだよね。
伊能
Vジャンプでは創刊から、堀井雄二さん(※3)や坂口博信さん(※4)のインタビューが載ってましたもんね。これ以降、クリエイターが自らゲームを紹介していく流れができていったような気がします。
鳥嶋
撮影にはスタイリストつけたりしてたものな。当時、CGが一番使えるといわれたカメラマンに撮影を頼んだり、少年ジャンプでは仕事ができなかった新しい人たちと組めるようになったのもよかったね。
近藤
vジャンプでの登場がきっかけで、一気に顔が売れた人もいましたよね、
葛西
最近ではカード&ゲームを紹介するカリスマも増えていますが、どう思いますか?
鳥嶋
いいんじゃないの?ゆるキャラみたいなものでしょ。元をたどれば高橋名人(※5)とかなんだろうけど、膨大な情報を子どもにわかりやすく紹介するためにキャラクターを用いるのはまちがっていないと思いますよ。
ウチダ
よかった…。
葛西
立ち位置そんなに変わらないけど、あなたカリスマじゃないでしょ!(笑)
ウチダ
みなさんに聞きたいんですけれど! 編集長在任時の一番の思い出はなんですか?
鳥嶋
イヨクは編集長になったことだろ!?(笑)
伊能
そうですねぇー。ずっと誌面で言ってましたからね。初めはそういうキャラ付けをされただけだったんですが、長いこと言ってるうちにそういう気持ちも芽生えてきたんだろうし。
鳥嶋
イヨクが新入社員のとき、ぼくが教育係だったんだ。
伊能
ちょうど『FFⅥ』が出たばっかりの頃で。「ソフトください」とかって言ってましたもんね。
鳥嶋
そのあと、編集部員を交代させるときにVジャンプへ呼び寄せて。そこからずっとVジャンプだから、長いよな。
近藤
鳥嶋さんは、逆に短いですもんね。
鳥嶋
Vジャンプの編集長だった期間は、わずか3年だからね。その次が吉倉で。
吉倉
その話を聞いたときは、あまりにビックリしてイスからズリ落ちましたからね。
鳥嶋
Vジャンプの未来を考えたとき、マンガを強化しないといけないという思いがあって。マンガのことがわかる編集長…と考えたとき吉倉だったんだよね。
吉倉
そんな理由があったんですね(笑)。えーと、思い出か。忘れられないことはいろいろあるけど、とにかく攻略本がよく売れたことかな。
伊能
DQとかFFだと、発売直前に出る増刊号も含めて200万部近く売れましたからね。
近藤:
ぼくが忘れられないのは『遊☆戯☆王R』の連載が始まって、VJ読者の間で本格的にカードブームが始まったことですね。
伊能
データカードダスや『DQモンスターバトルロード』などのカード筐体も出てきて、付録に特製カードが何枚もつくようになりましたもんね。
近藤:
1990年代の終わり頃から『遊☆戯☆王』のゲームやカードは人気があったんだけど、週刊少年ジャンプでのマンガ連載が終わり、本格的にVジャンプをホームグラウンドにしてから、さらに広がっていったよね。年齢や読者の層が幅広いWJより、少年読者が圧倒的に多いVジャンプは『遊☆戯☆王』と相性がよかったんだろうね。
鳥嶋
思えばVJがここまで続いてこれたのは、形を変え続けてきたからなんだよね。ゲームだけでは、読者の興味をひっぱり続けることが難しい。初期のVジャンプに欠けていたパーツを、カードが埋めてくれたんだ。
葛西
鳥嶋さんの思い出はなんですか?
鳥嶋
一つは『クロノ・トリガー』だね。
ウチダ
DQの堀井さんとFFの坂口さん、鳥山明先生が合体してできた夢のソフトですね!
鳥嶋
VジャンプをやっていくうえでDQとFFを柱にしようと決めたけど、その二本だけだとつまらないじゃない。そこで『DQ』『FF』を抜くようなゲームを作ろうと考えたんだ。堀井さんとは『DQⅠ』から、坂口さんとは『FFⅣ』の途中からのつきあいだけどこの二人を組み合わせることで、お互いの作品に新しい刺激が出てくればいいと思ったし。そこに鳥山先生の絵が乗ることで最強のゲームができ上がる、それをVジャンプで紹介できるという思惑があったんだよね。ところが…
葛西
なにかあったんですか?
鳥嶋
一度できあがってきたソフトを遊んでみたら、全然面白くなくて。「これじゃダメだ」と電話しようとした矢先に、坂口さんから電話がかかってきて「イチからやり直します」と言われてね。そこからは坂口さんが再度現場を仕切り、自分も床に寝るような勢いで作品を作り直してくれて。発売は1年半遅れたけど、とてもいいゲームに仕上がったよ。
ウチダ
そんなことがあったんですねー。
鳥嶋
もう一つの思い出は…『ポケモン』を取り逃がしたことだな!
伊能
(笑)。それは反省ですか?
鳥嶋
そうだね。初めてにして、最大級の失策。それまで「これはヒットする!」と思ったゲームは全部わかったし、自分の雑誌で紹介してきたのになー。『ポケモン』は、発売前のソフトを遊んでまでいたのに、その面白さに気付くことができなかった。
近藤
ちょうどプレイステーションとかの、グラフィックにすぐれた作品が主流になっていく時期にリリースされたから、地味に見えたのかもしれませんね。
鳥嶋
しかも白黒だったしね。
吉倉
ゲームがむずかしくなっていく中、わかりやすいものがポンと出てきたのもよかったんでしょうねー。
鳥嶋
読者である子どもたちは、面白いもの・いいものをズバリと見抜く。彼らの選択眼は常にフラットで鋭い。本当にすばらしいよ。
ウチダ
最後に聞きたいんですが…みなさんのベスト1ゲームってなんですか?
鳥嶋
『DQⅡ』だね。
葛西
『Ⅲ』じゃないんですか?
鳥嶋
あれは転職とか、システムが作品全体に及ぼす影響が強すぎるから。全体のバランスとか好みで言うと『Ⅱ』になるね。
吉倉
ぼくは『FFⅦ』かな。グラフィックが圧倒的に進化して、すごく新しさを感じたよね。当時ロサンゼルスにあったスタジオで、制作中の『FFⅦ』を見せてもらったことがあって。仕組みまではよくわからなかったけど、「スゴいものが作られているんだなー」という期待感は忘れられないね。
近藤
ぼくは『モンスターハンターポータブル2nd G』(※5)ですね。
葛西
おおー!
近藤
あとはセガサターン版の『バーチャレーシング』(※6)ですね。あの立体表現はスゴかった。
伊能
ぼくも、同じような理由で『スターフォックス』(※7)ですね。3Dグラフィックがスゴいなーと遊びながら思っていて。当時、集英社では任天堂のソフトを扱っていなかったから「いつか、自分で紹介してみたいなー」と思いながら遊んでましたね。まあ、ふつうに遊んでいることはすべて、VJでの仕事につながっていくんですが。
鳥嶋
思えばVJの仕事してたときは、人数も少なくて大変だったけど、その分「楽しくやろうぜ」って言ってたよね。当時は、編集者としてのあり方を問い直すいい時間でもあったし、好きなことや好きな人たちに囲まれていい仕事ができたと思う。何よりも、Vジャンプは協力してくれるメーカー、ページ作りをしてくれるライターやデザイナーをはじめ外部のスタッフがいなければ作れないシロモノだから、その人たちへの感謝を忘れちゃいけない。
伊能
全部数えたら、百人は軽く超えますからね。編集部の数名だけじゃ、到底無理な話で。そして、さらに感謝しなくちゃいけないのは毎月本誌の発売を楽しみにしてくれている読者のみなさんですよ!
ウチダ&葛西
そうですよね! それでは最後に、現編集長のイヨクさんから読者のみなさんへメッセージをお願いします。
伊能
我々編集部員&スタッフも、全力で楽しみながら充実した雑誌作りに取り組んでいきますので、今後もVジャンプの応援をよろしくお願いします! これからも、みんなに楽しんでもらえるモノをどんどん提供していきますよー!
ウチダ&葛西
ぼくらもがんばります! きょうはありがとうございました!!